Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「な〜んだ」
こんな会話はいつものことだ。
ミシェルは毎度同じことを尋ねては、同じ答えを聞き、同じように落胆する。
それでも好奇心は抑えられないのか、次回も多分同じことを聞くのだろう。
「こらっ! ミシェル!
いい加減にしないか! 仕事しろ、仕事」
いきなりミシェルの背後から大男が現れた。
手に持った盆でミシェルの頭を軽く小突いて叱る。
「あいたっ!
もう、何すんの………」
文句を言いながら振り返ったミシェルだったが、その姿を確認すると、
「はぁーい」と罰の悪そうに返事をして仕事に戻っていった。
「ごめん。また後でね」とジルに耳打ちして。
「すまんな、二人とも」
そう二人に頭を下げたのは、今しがたミシェルの頭を小突いた彼女の兄、リジーだ。
歳はローグと同じだが、その髭や図体の大きさから、かなり歳上に見える。
ミシェルと違って話すのは苦手なのか、彼は短くそう言うと、テーブルを去っていった。