Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
一連のやり取りを見て、ジルはローグと顔を見合わせると、苦笑して肩を竦めた。
いつものミシェルの去るパターンである。
いつもならローグもここで苦笑いをジルに見せているはずだった。
だが、今日はいつもと違っていた。
ローグはジルの肩越しに、今リジーがいた方向から視線を外せないでいる。
「どうしたの?」
「おい。ジル……」
ジルが不思議に思ってその方向を振り返ったのと、ローグが合図したのとはほぼ同時だった。
「あ……」
視線の先を確認したそのとき、微かに身体が硬直したのをジルは感じた。
視線の先にあるぽんぽん亭の入口。
そこには、あの王女のお供をしてきた老人サダソと、後から合流してきたであろう銀髪の男が、こちらを見据えて佇んでいた。
ジルたちが気づくと丁寧に頭を下げて会釈する。
「…少し、よろしいですかな?」
サダソは他の客たちを擦り抜け、真っ直ぐにこちらへ近づいてくると、そう話し掛けてきた。
「あの……、何か……?」
戸惑い、警戒するジル。
お姫様のお供が一体なんだというのだろう。
そんなジルに向かってサダソは静かに口を開いた。
「突然で申し訳ないが、実はあなた方に折り入ってお話があるのです」