Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
頭が痛い…。
ジルは身体に残る倦怠感と軽い頭痛で目を覚ました。
ぼんやりとした視界に見慣れた天井が映っている。
窓の外はまだ薄暗く、陽の光もない。
まだ夜明け前だろうか。
霞んで映る部屋の天井を見ながら無意識に寝返りをうつ。
すると言いようもない嘔吐感に見舞われた。
「うっ……」
ズキズキとした頭痛が増し、胸焼けが酷くなる。
全体的にかなりの嫌悪感。
風邪だろうか…。
いや、違う。
次第にはっきりしてくる意識と共にジルは感じた。
嘔吐感を抑えるようにゆっくりと息を吐き、昨晩、酒を飲んでいたことを思い出す。
少々呑みすぎてしまったようだ。
完全な二日酔い。
気分は最悪である。
ふとベッドの脇に目を移すと、乱雑に脱ぎ捨てられたシャツにズボン。
お気に入りの茶色いブーツは片方だけしかそこにない。
不安になって衣服を確認すると、いつもの寝巻きを身に纏っていた。
帰宅したときのことなど一切覚えていない。
昨晩はいったいどういう醜態を晒してしまったのだろう。
ジルは溜め息をつきながら枕に顔を埋めた。
しかし、どうしてそこまで酒を体内に摂取してしまったのだろうか…。
記憶を辿ってみるが、朧げで思い出せない。
隣のベッドではローグが気持ち良さそうにイビキを奏でている。
かなり羨ましく感じた。
そんなローグのイビキをBGMに、ジルはもう一度目を閉じて、昨晩の出来事を思い起こそうとした。