Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「実は、あなた方に折り入ってお話があるのです」
確かにサダソはそう口を開いた。
二人ともなにやら深刻な表情を浮かべながら、もう一度頭を下げる。
話…?
ジルはどう言っていいか分からず、何も答えられなかった。
意味が分からず、ローグと顔を見合わせる。
彼も分からないといった表情で眉をしかめていた。
「この者は、クリストファー・フレックス。
我が国の有能な魔法使いです」
紹介された男が軽く頭を下げたので、ジルたちもつられてお辞儀をした。
楽しく食事をしていたのが、一変してこのテーブルだけが静まり返ってしまった。
周囲の客たちは相変わらず賑やかに談笑を続けているが、ジルにはその声がワントーン小さくなったように感じた。
しかし、よく状況が理解できない。
突然のことで言葉も出てこないが、ジルの警戒心は強まる一方だった。
彼らがこの村にやってきた理由さえ分からないのに、自分たちに話とはどういうことなのだろうか?
だが、姫の護衛をしてきた彼らは、恐らく王に近い人物だと推測できる。
側近か何かだろう。
そんなサダソたちをあしらうことなど出来るはずもない。
「あの…、お話とは…?」
ジルは上目遣いで彼らを見上げると、仕種でテーブルに着くよう促してみせた。
「失礼」とサダソが断り、二人が静かにジルたちのテーブルに着く。
「実は、姫のことでお願いがございます」
サダソはテーブルの上に手を組み合わせ、一呼吸おいた後に少しばかり深刻な表情を溶いて話し始めた。