Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
愛娘の旅立ちを王メルビンはさぞかし心配した。
だが、儀式は義務である。
そしてメルビンの跡を継げる者はカチュアしか存在しない。
旅のお供には、昔からカチュアの教育係で王の側近であるサダソと、イスナ国騎士団の準リーダーが選ばれた。
お家心配をかけぬよう、カチュアは精一杯の笑顔で旅立った。
今から約一週間前のことである。
「そうして、やっとバルバロッサの森を目の前にして、この村に辿り着いたというわけです」
サダソはそこまで言うと、手元にあったグラスを口にした。
グラスの中の液体は、この村の名産品の栗芋を使った焼酎だ。
「へぇ。お姫さんも結構大変なもんなんですね」
本日三杯目のビールジョッキを手にローグが答える。
少しほろ酔い加減なのか、言葉遣いが砕けてきているような気がする。
「ですけど、そのことと私たちと何か関係があるのですか?」
ジルは思ったことを訊いた。
そう、これまでの話を聞く限り、自分たちには何の関係もないように思う。
なぜ彼らは自分たちに近づいてきたのだろう。
するとサダソは一つ咳払いをし、ジルとローグを見渡して言った。
「はい。それで、本題はここからなんです」