Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
足元にうっすらと積もった雪が気になり、トントンと踏み固めてみる。
次第に少女の脚は軽くリズムを刻むように動き始めた。
誰かが見ているのも構わず、その場でくるくるっと回ってみせると、白い息を弾ませた。
だが、ふと少女の目にあるものが留まった。
メインストリートを挟んで向かい側にあるベンチに座った一人の男性。
その男はこんな楽しい夜だというのに、肩を落として俯いている。
行き交う人々はそんな男を気にするわけもなく、家族と会話しながら、また恋人と寄り添いながら通り過ぎていく。
しかし、少女はそんな男性がすごく気になった。
やってくる馬車がいないことを確認すると、少女は大通りを小走りに渡ってその男に近づいた。
薄紫色の小綺麗な洋服を着たその男は、近づいてみるといっそう寂しげだ。
俯いていて顔はよく見えないが、父親ほどの年齢ではなさそうである。
が、その男は少女が近づいてもピクリとも反応しなかった。