Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
時刻はまだ昼前だろうか、太陽が高い位置から森を照らし、木漏れ日が降り注ぐ。
光と影の斑模様が、辺りに幻想的な風景を描いていた。
会話という会話は殆どなく、黙って歩き続けて数時間が経った頃、ローグがふと足を止めて言った。
「この辺りから奥に行かないと」
手に持っていた地図と方位磁石を交互に見ながら、そのに現れた分かれ道を確認する。
獣道とまでは言わないが、森を通る一本道のようにある程度整えられた道ではない。
人が一人通れるほどの細さで、雑草が生い茂り、足場も悪そうだ。
「危険はないの?」
カチュア姫が眉をしかめながらローグを見上げた。
「分かりません。私たちもこの一本道を外れるのは初めてなので…。
しかし、姫のことは全力でお護りすると誓いますよ」
後ろからやってきたジルは、なるべく姫に不安を与えないように微笑みながら言った。
そのジルを真っ直ぐに見つめたカチュア姫。
一瞬、その瞳に影が差したように感じた。
「あなたたちには、申し訳ないと思っています…。
本当にありがとう」
透き通った綺麗な声で、姫はそう言った。
ジルを見るその瞳は、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。