Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「さぁ、行きましょう」
カチュアの号令と共に三人は一本道を外れ、森の奥へと足を踏み入れていった。
一本道とは違い、足場が徐々に悪くなっていく中を、
カチュアを挟むように先頭をローグ、後部にジルといった形を守りながら進んでいく。
いつの間にか細かった道の姿はすっかり消えてなくなってしまい、雑草や苔の生えた地面だらけになっていった。
大小に散らばる木々の間を、枝に気をつけながらくぐり抜けていく。
そうして暫く進んでいくと、少し休めそうな開けた場所に出た。
「思ったより順調だ。
ちょっと休憩しようぜ」
背負った荷物を地面におろしてローグが言った。
水分を補給するために水筒を取り出す。
カチュアもその場にあった大きな岩に体を預けていた。
ローグの言ったとおり、順調すぎるほどに進んでいた。
太陽はまだ高い位置にある。
この調子だと、夕暮れ前には洞窟の近くまで行けそうだ。
「大丈夫?」
カチュアにとって、このような足場の悪い場所を長時間歩くのは始めてのことなのだろう。
軽く太腿を揉みほぐしている姿を認めてジルは声を掛けた。
「えぇ」
と彼女は笑ってみせたが、疲労が溜まりつつあるのは明白だった。
痛みを感じるのか、口元が歪んでいる。
歩くペースが早すぎたのかもしれない。
休憩は少し長く取った方がよさそうだ。
「ちょっと待って…。確か、筋肉痛に効く湿布があったはず…」
ジルは足元におろした荷物の中の薬袋をまさぐった。
おかしいな…?
確かに持ってきたはずなのに…。
リュックの中はいろいろな物が入っている。
野宿用にブランケットを入れてきた為か、なかなか目当ての袋が見つからない。