Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
顔をついた返り血を拭いながら、カチュアの元に駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
そう声を掛けると、カチュアはまだ震えながら静かに頷きを繰り返した。
優しくてを差し伸べると、カチュアはジルに抱きついてきた。
細い肩が小刻みに震えている。
余程に恐ろしかったのだろう。
こんな間近で惨たらしい殺戮など目にしたことがなくて当然だ。
恐ろしいに決まっている。
そう思うと、ジルの心は痛んだ。
まだ震えているカチュアを連れて、ジルたちはその場を離れることにした。
近くにまだ獣人が潜んでいるかもしれない。
血の匂いを嗅ぎつけ、新たなモンスターが現れるかもしれない。
一度も凶暴な魔物に出くわしたことのなかったこのバルバロッサの森だが、今日で一変した。
この森はまだ知らないことが多い。