Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
恐怖で慄き震えるカチュアをローグが支え、先に歩き出す。
ジルも散らかった自分の荷物を整えると、二人の後を追おうと立ち上がった。
その時、ふと何かの視線を感じた。
振り返って確認てしみるが、その場にあるのは倒れた獣人の死体が三体のみ。
茂みの向こうから新たなモンスターが現れる様子は感じられない。
つい先ほど獣人との戦闘が起こったようには思えないくらいに、午後に吹く穏やかな風が、辺りの木々を揺らして音を立てている以外、静かなものだ。
確かに誰かに見られているような感じがしたのに…。
だが、こんな森の中にモンスター以外に人がいるとも考えられない。
気のせいだろうか…。
「おい。ジル。行くぞ」
ローグがその場に立ち尽くしているジルを見て声を掛けた。
早く来いと動作で促している。
確かにこの場で佇んでいる訳にはいかない。
今は静かでも、またモンスターが現れる可能性があるのだ。
「分かった。今行くわ」
ジルは答えると、もう一度辺りを確認した。
特におかしなところは感じられない。
やはり気のせいか。
ジルは首を傾げながらローグの後を追った。