Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
そんなカチュアに、「だけどよ?」とローグが水を差すような口調で言った。
程よく火の通った干し肉を差し出す。
受け取ったカチュアは首を傾げてローグを見た。
「カチュアはまだ十代だろ?
王位継承つっても、そんなに焦ることないんじゃないのか?」
炙った干し肉に被りつきながら言う。
ローグは王族の考えなんてよく分からない、そう言っているようだ。
「俺がカチュアの年ぐれぇの時なんか、家のことなんて考えもしなかったぜ」
などと、自分と比較している。
「ローグ? カチュアと一緒にしちゃ失礼よ。
カチュアは今から王位継承者としての自覚を持たなくちゃいけないってことなのよ。
それに、ローグなんて今でも家のことなんて考えてるように見えないけど?」
真剣な話に的の外れた意見を出すローグに対し、ジルは嫌味を込めて言ってやった。
「お前な!」
「ちょ…、やめてよぉ」
腹を立てたローグがジルのこめかみに拳を当ててグリグリする。
ジルはそれを笑いながら防いでいた。