Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
そんな二人の姿を見ていると、カチュアは可笑しくて吹き出すように笑ってしまった。
笑われて自分たちの行動が恥ずかしくなった二人。
カチュアは暫くクスクスと口元を押さえて笑っていたが、次第にそれも途切れ、やがて視線を足元に移すようにして俯いた。
「カチュア…?」
気がついたジルが彼女を覗き込んだ。
「なんだか、ジルとローグが羨ましいな…」
カチュアはそうポツリと漏らした。
王族として生まれた彼女にとって、知らない生活をしてきた二人がとても眩しく見えたのは間違いない。
堅苦しい決まりごとなどなく、自分たちの目的を自分たちで見つけて生きている。
だが、そんな二人と自分は違う。
自身にとても大きな責任があることも自覚している。
「私ね…」とカチュアは俯いたまま呟くように言った。
「私…、城の中に勤めている人以外、誰とも話したことがなかったの」
「…カチュア……」
「この旅が終わったら、私はまたお城から暫く出られない。
けど、二人のことは絶対に忘れないからね」
カチュアは顔を上げて精一杯の笑顔を二人に振りまいた。
ジルはカチュアの笑顔を見ながらなんて答えていいか分からなかった。
まだ若くて遊びたい年頃なのに、彼女はずっと孤独だったに違いない。
どんな幼少期を経て今に至るのだろうか。
ジルには想像もできなかった。