Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
少しの間、沈黙が続いた。
焚き火が三人を静かに照らし、パチパチと薪の爆ぜる音だけが聞こえる。
先ほどより気まずい空気が漂っていた。
「ローグ…」
カチュアがポツリと口を開いた。
「励ましてくれてありがとう。
でも、マイペースって訳にはいかないんだ…。
私には、時間がないのよ…」
か細い声でカチュアは呟くように言った。
とても悲しそうなのが横顔からでもよく分かる。
「時間……?」
どういうことだろうか。
よく意味が分からない。
ジルは彼女の話をもう少し聞いてみようと、黙って彼女の言葉を待った。
「私にはね、兄弟がいないの。母も私が子供の頃に亡くなったわ…。
王位を継げるのは私だけ。
そして、私は16になった…」
ポツリポツリとゆっくり話し出すカチュア。
ジルは聞きながらサダソの話を思い出していた。
以前サダソが話してくれた内容と同じだ。
王位継承者はカチュアただ一人。
将来カチュアは国を背負って生きていくことになるのだ。
将来に対して不安を感じているのだろうか。