Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「大丈夫よ、カチュア。ゆっくり時間をかけて勉強していけば。
カチュアならきっとできるわよ」
ジルは元気付けるようにカチュアの背中を撫でたのだが、
「だからっ、時間なんてないんだってば!」
とカチュアに一蹴されてしまった。
ジルは驚いた。
感情を激しく表したカチュアの瞳には、大粒の涙が溜まっていて、今にも流れ落ちそうだ。
「お、おい。どうしたんだよ?」
ローグも呆気にとられ、それだけ口にしてカチュアを覗き込む。
カチュアは膝頭を抱え込むと、「お父様は…。お父様が……」と呟いた。
蚊の鳴くような小さな小さな声で。
お父様…。
カチュアのお父様というのは、イスナ国の現国王のことだ。
ジルはハッとしてカチュアに詰め寄っていた。
「カチュア。どうしたの?
国王がどうかされたの?!」
「王は…。父は……」
カチュアはそこで言葉を区切った。
膝を抱える拳に力が入る。
そして、息を飲み込むと静かに言った。
「父は…、っ……病気なの………」