Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
夜半過ぎ、ローグと火の番を交代したジルは、姿勢を変えながら薪を焼べた。
気温はさほど低くはないが、火を絶やす訳にはいかない。
暗闇の森の中では夜行性の獣たちが行動している。
それらの獣から身を護るために火は必要だ。
オレンジ色の炎が揺れ、暗い森に佇むジルの顔を照らしていた。
ふと、膝に掛けていた短いマントを見て、「はぁ」と思わず溜め息が出た。
昼間の獣人とのやり合いで、右半分ほどから切り裂かれてしまっている。
首元に巻きつけてバッヂで固定するタイプで短い丈が動きやすい。
大した防御力はないが、それなりに気に入っていた。
悔やんでも破れたものは元には戻らない。
ジルは軽く首を振って、焚き火の様子を見るに戻った。
枝で薪を位置を動かすと、乾いた木がパチンと弾けた音を出す。
辺りは静かだった。
虫の声も、夜行性の動物が動く気配もしない。
ただ、ジルの目の前にある焚き火の燃える音だけが静かに辺りに広がっていた。