Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
ふと隣を見ると、カチュアがもそもそと体勢を変え、上半身を起こすところだった。
「眠れない?」
「ううん…。ちょっとは寝た気がするから…」
そう言って、カチュアは膝を抱え込む。
「ホットミルクでも飲む?」
「ありがとう」
温めたミルクをカップに移し、カチュアに渡す。
彼女はカップを両手で包み込むように受け取ると、少しずつ啜った。
野宿の経験など初めてのことだろう。
ぐっすり眠れなくても当然かもしれない。
ホットミルクが少しでも眠気を誘発してくれればいいのだが。
「ジルとローグには、本当に感謝してる」
「え…?」
「さっきは、話を聞いてくれて、ありがとう。
少し楽になった気がする」
カチュアは言ってジルに微笑んだ。
そんな言葉を聞くとジルもホッとしてくる。
「お姫様って、もっと優雅に暮らしてると思ってた…。
小さい頃はいろんなこと想像して、羨ましいなんて思ったりもして」
カチュアも先ほど、ジルたちのことが羨ましいと告げていた。
お互い、隣の芝生は青いと言ったところだろうか。
だが、そんな生活を交代することなど叶わないのが現実なのだが。
それに、その立場になれば、また違った意味で苦労が芽生えるはず…。