Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「でも、カチュアは大変なことを抱えてるんだね」
ジルがそう呟くようにいうと、カチュアは苦笑した。
「お父様がこんなことになってからは特に、ね。
けど、サダソとクリスが傍にいてくれたわ。
一人ぼっちの私がいつも寂しくないように、話し相手になってくれたし…」
ジルの頭の中に二人の顔が思い出される。
「二人はいつ頃から?」
「物心ついた頃からずっと。
サダソは教育係だから、口煩いの」
ジルに向いて言うと、カチュアはペロッと舌を出す仕種をした。
簡単にサダソの叱る姿が想像でき、ジルはぷっと吹き出した。
「クリスは大臣の子でね。お兄さんみたいな感じで、優しくしてくれたわ。
彼、ああ見えて魔法が得意でね、城の中で彼に敵う者はいないのよ」
クリストファーのことを話すカチュアは、なんだかとっても嬉しそうだ。
まるで、自分のことのように自慢する。
もしかしたら、カチュアは誰にも言えない想いを彼に抱いているのかもしれない…。
カチュアを残して先にイスナへ帰った二人。
クリストファーのカチュアに対する視線はとても温かかった。
クリストファーも、もしかしたら…?
なんて、勝手にジルは想像していた。