Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「実は、私も少しだけどね、ヒールの魔法が使えるの。
クリスにちょっとだけ教えてもらったんだ」
カチュアの話は続いていた。
先ほど、王の話をしていた時とは違い、とても明るい表情である。
「え? そうなの?
私は魔法が使えないから、なんだか羨ましい」
魔法というものは、習えば誰もが使えるようになるなんて単純なものではない。
持って生まれた潜在能力が深く関係しているらしい。
残念ながらジルにはその能力がなかった。
なので、今のカチュアの話は本当に羨ましく思う。
「そんな、自慢できるものじゃないけどね。
できた時はクリスの方がはしゃいじゃったくらいよ」
切れ長の瞳をいっそう細くし、カチュアは想い耽っている。
心から彼を想っているのだろう。
恋する女性は輝かしい。
辛い中でも、彼を想うと頑張れるのかもしれない。