Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「あ、でも…」と何かを思い出したようにカチュアは口を噤んだ。
「ん?」
「半年くらい前に、クリスのお父様が亡くなったの…。その時はしばらく元気がなくて、落ち込んでた。
私はそんなクリスに何もしてあげられなくて…」
その時のことを思い出したのか、肩を落とすカチュア。
「でもね、クリスは辛い弱音なんて言わなくて…。
何もできなくて、私、ちょっと自分が情けなくなっちゃった」
「………、そう…」
「クリスは強いと思う。辛いことがあっても、ちゃんと乗り越えてる。
私も頑張らなくっちゃね」
カチュアはそう言って笑顔を見せた。
ジルも一緒に微笑む。
カチュアにとって幼い頃から一緒にいたクリストファーは心の支えなのだろう。
叶わぬ恋かもしれない。
だが、そんな儚き想いを大事にしてもらいたい。