Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
STAGE 6
翌日の朝を無事に向かえた三人は、テキパキと支度を整え始めた。
乱れた髪を結わえ直し、少し高めの位置て一つに束ねる。
ジルは進路の確認をするために地図と方位磁石を取り出した。
「この先は傾斜がきつくて登れない。
こっちから廻って行くしかないな」
ジルの肩越しからローグがひょっこり顔を出して、手元の地図を覗き込む。
地図と森の中を交互に指差しながら言った。
顔が近い。
ローグとの至近距離にジルの鼓動はドキリと鳴った。
「そ、そうだね」
慌てて地図を仕舞い、ローグとの距離を取る。
自然に見せかけたつもりだったが、明らかに不自然だ。
しかし、ローグは気にした様子もなく、「さ、行こうぜ」と首を傾けて出発を促すのだった。
ぎこちない笑顔を向けながらジルは頷いた。
まったく…。
カチュアが変なこと言うから、変に意識しちゃうじゃない。
先に進むローグの背中を眺め、変に意識してしまう思考を締め出すように頭を振る。
気持ちを入れ替えなければ…。
今はイスナ国王女の護衛中なのだ。
もう危険がないとは言い切れない。
いや、危険だらけの森の中だと言っていいのだから。