Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
橋の前に辿り着いたカチュアは、恐怖で足が竦んでいた。
人一人しか通れない幅の吊り橋は、植物の蔓で編まれただけの頼りないものにしか見えなかった。
手すり部分を握ると、手触りのよくない蔓が、ギリギリと今にも切れてしまいそうな不安な音を出す。
足場になっている板も隙間が大きく開いており、その上朽ち果てた板は踏めば抜けてしまいそうだ。
真下を流れる川の流れの勢いが激しいことがはっきりと分かり、水面までは僅か三十数メートルほどしかないはずなのに、その距離は二倍にも三倍にも感じられた。
覗くと吸い込まれて堕ちていってしまいそうだ。
下を見るだけで目眩と嘔吐感に襲われる。
ジルとローグは平気なのかもしれない。
だが、カチュアには到底一人で渡れそうな橋ではなかった。
「カチュア。行けるか?」
ローグの問いかけに、カチュアは無言で首を振る。
顔を青ざめ、竦んだ足が小刻みに震えていた。
「大丈夫よ。私が手を引くから」
ジルがそう宥めても、カチュアは高所に怯えているばかりだ。
「む、無理よ…」
と小さい声で繰り返す。