Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
なぜこんな巨大生物の接近を許してしまったのか。
それなりの予兆があったはずだが、何も感じ取ることができなかった。
しかし、悔やんでも後の祭りだ。
ギリッと奥歯を噛みしめ、ダガーを握る右手に力を込める。
巨大な蜘蛛の化け物と対峙したジルは、奴の攻撃に対処できるよう身を低く構えて睨み上げた。
最初の攻撃を避けられ、対象物を見失った蜘蛛は、大きな長い足を不気味に動かしながら辺りを窺っている。
そして、攻撃対象をジルに定めると、容赦なく粘着力のある糸を吐き出した。
シャャァァァーーー!!
足元を狙ってくる何本もの白い糸をジャンプとターンの軽快な足捌きで躱す。
降りかかってくる糸は右手のダガーで切り裂いた。
裂かれた糸の断片が腕に絡みつき不快に感じる。
それを払いつつもジルは蜘蛛の攻撃を避け続けた。
シャャァァァーーー!!
地を蹴って後方に跳躍し、体勢を整えるが、すかさずそこに長い足が跳んでくる。
ダガーを盾にして長い足を受け止めた。
力が強い。
ジルはその力に耐えきれず、真横に吹っ飛ばされてしまった。
大木に叩きつけられると、衝撃で木は枝を大きく揺らした。
そのまま地面に落下する。
かろうじて着地したが、全身を殴打した痛みが襲い、直後に嘔吐感が生じてきた。