Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
蜘蛛を襲った炎は次第に弱まり、やがてブスブスと燻して真っ黒に焦げた頭部が現れる。
現れた蜘蛛の目は怒りに燃え滾っていた。
シャャァァァーーー!!!
ローグに向かってさっきよりも多くの糸が吐き出される。
巧みに攻撃を避け、剣を振る。
炎によってダメージを受けた蜘蛛の動きは先ほどよりも鈍い。
何度か蜘蛛の体を刺し、剣によって払われた黒い足が宙に舞った。
だが、化け物は退散することなく、二人に向かって更に攻撃を続けてきた。
小柄なジルの身体を捉えようと、頭上から細い足を伸ばしてくる。
地面にドスドスと突き刺さり、辺りには小さな穴が無数に開けられていく。
その足をジルは身体を捻って躱すと蹴り飛ばした。
更にそこへダガーを突き立てる。
だが、奴は痛みを感じていないのかと思うくらい攻撃の手を増した。
おかしい。
普通のモンスターなら、身が危ないと感じ取ると逃げていってしまうはずなのに。
ここまで執拗に襲いかかるモンスターは珍しい。
ましてや、先ほど炎に襲われ、黒焦げになるところだった。
炎を恐れないなんて……。
攻撃と防御を繰り返す最中で、ジルの僅かな思考が回転する。
この化け物はいったい何なんだ。
その時、
「きゃぁ〜〜〜」
突然悲鳴が響き、ジルとローグの注意が逸れた。