Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
あれは、魔法陣か…。
素早くローグを振り返る。
ローグはカチュアを庇うように立ち、蜘蛛との一戦を繰り広げている。
蜘蛛は体のあちこちから体液が滴り落ち、ダメージを受けているのが分かる。
足も何本か切り落とされ、動きもかなり鈍くなっていた。
が、そんな姿になっても蜘蛛は攻撃をやめない。
暴れ狂うように、何度も繰り出す。
ローグではなく、カチュアを狙って。
ジルはもう一度茂みの影に目を移した。
間違いなく魔法陣が描かれている。
消えかかってはいるが、不気味な紫色の光を放ち、静かにその存在を表している。
嫌な予感がした。
ジルは歯を食いしばると、再度戦場に向かって飛び出した。
気配もなく唐突に出現した巨大な蜘蛛の化け物。
ダメージを負っても退散すらしないあのモンスター。
あれは……。
あのモンスターは、召喚されている。
いったい何者があの化け物を召喚させたのか、思考を巡らせても答えは分からない。
だが、化け物は確実にカチュアを狙っている。
これだけは確かだ。