それでも貴方を愛してる
葵は私にキスすることなく、電話に出た。
そんな葵を見ながら私は下唇をこれでもかってくらい強く噛み締めた。
「あぁ…うん、何?泣いてんの?……あぁ今から行く。……そこで待ってろ美沙」
どくんっと大きな音を立てて心臓が跳ねた気がした。
ねぇ、どこ行くの…
電話を切った葵は罰が悪そうな顔をして私に向き直った。
「ごめん、用事出来た」
そう言って私の髪に触れようとした葵を軽くかわして、私は葵を見た。
葵は髪の毛を触るのを避けた私に少し驚いて目を見開いた。