【完】結婚させられました!?
□そんなつもりはなかった:大倉side
触れた唇が、どうしようもなく柔らかく
て。
鼻腔を満たす彼女の匂いが、泣きたくな
るくらいに甘くて。
大きく見開かれた無垢な瞳に映る俺が、
あんまり苦しそうにしていたから。
「───……ごめん、澤部」
そう、謝るしかなかったんだ。
───俺がこんなことをしでかしたのも
全部、委員長が悪いんだ。
文化祭で、シンデレラをやることになっ
た俺のクラス。
多数決で決められた王子役の所には俺の
名前があって。
(めんどくせー……)
ただただそんな風に思いながら、黒板を
見つめていたら。
シンデレラに抜擢されたのは、俺が密か
に想いを寄せている澤部だった。