【完】結婚させられました!?
すると、それまで捨てられた子供のよう
な表情を浮かべていた大倉の表情が、少
しだけハッとしたようになって。
その瞳が、何かを探るように煌めいた。
「大倉は、たった一人の大倉って人間だ
もん。大倉の代わりも、先輩の代わりも
、居ないんだよ。
大倉は先輩になんてなれないし、先輩も
大倉にはなれないんだよ───」
そこまで伝えた時、不意に重心が後ろに
傾いて。
クラッと歪んだ視界のなか、焦ったよう
な大倉の顔と、私を呼ぶ声だけが、最後
に聞こえていた───……。
次に目が覚めた時、映ったのは、天井と
、すっかり日の暮れた、真っ暗な空を映
し出す窓だった。
あれ……私……。
起き上がろうとするけど、身体が重たく
て、怠くて動かなかった。
その時、襖〔ふすま〕の開く音が聞こえ
てきて、ちらりと視線だけを泳がせば、
先輩が立っていた。
「先、輩……」