【完】結婚させられました!?
じ、と彼を見つめれば、だんだんと戸惑
いがそこから消えていき。
ただ、切なさを残して、揺れた。
「手慣れてる訳、ないだろ……。今も昔
も、俺は心優しか見てない」
そう言った音夜君は、私の手を握る力を
込めて。
「心優だけなんだ、俺には……あの日か
ら───」
今度は、私の番だった。
戸惑いに飲み込まれるのは、私だった。
訳のわからない感情に支配されていく。
望んでいたのは、そうじゃなかった。あ
の日の約束を先に裏切ったのは自分じゃ
ないんだって確証が欲しくて。
それなのに、嬉しい、なんて───。
拙い口約束と指切りを、切実に守ってく
れていたことが嬉しいなんて。
そんな感情、もつ資格さえも無い。