【完】結婚させられました!?
渇いた笑いを溢しながらも、純の送って
いる視線に自分の視線を重ねれば。
藤色の浴衣を着た、心優が立っていて。
しかも───。
「……なんで、鷺沼が……」
心優と向かい合うようにして、鷺沼が立
っていた。
その瞬間、花火がうち上がる。
なのに二人はそれに目もくれず、何かを
話していた。
今すぐそこから心優を連れ去ってしまい
たかったのに、揺れる心優の瞳を見たら
、どうしてかそれは出来なかった。
心優の表情が、いつもと違った。
俺の知らない心優が、そこにいて。どう
しようもない不安が舐めるように這いつ
くばって来て。
ただ、どうしてか切なくて。
君の瞳に映るのは、ずっと、永遠に俺で
あればいいのに。
刹那、君の瞳に映るのは、俺じゃなかっ
た。