【完】結婚させられました!?
□隠し事は出来ないみたい:心優side
「───ゆ……心優!」
ふと、名前を呼ばれてハッとすれば、怪
訝そうに私を覗きこむ先輩の顔がドアッ
プで映って。
「っわぁ!?」
そのあまりの近さに、思わず高速で飛び
退いてしまうと、先輩が不機嫌そうに目
を細めた。
「……なんだよ、その反応。心優がボー
ッとしてるから心配してやったのに」
「え、い、いや……!」
ボーッとしてなかった、とも言えず、た
だ拗ねてしまった先輩のご機嫌を、どう
して取り戻そうかと考えていたら。
「まあまあ、そんなことで怒んないの」
どこからか、のらりくらりとした陽気な
声が聞こえてきて。
いつもは場違いだ、って思うその声も、
今では天使の囁きにしか聞こえない。
先輩が、面倒そうに眉を寄せた。