Sweet Honey Birthday[完]
4
駅から歩いて10分程の所にある和泉先輩のお家は、まだ新しい一軒家だった。
「おじゃまします…」
緊張でガチガチの手足を何とか動かして、ミュールを揃えていると、どこからかダダダッと言う足音が聞こえてきて。
背中にドンッと言う衝撃が来たかと思えば、いつも写真で見ていたセーラが、フンフンとにおいを確認していた。
そんなセーラに先輩が、「セーラ」と少し強い声で嗜めている。
セーラは満足したのか、また廊下を歩いてどこかへ戻ってしまった。
「ごめん、急に…。平気だったか?」
申し訳なさそうに、眉を下げる先輩を見て、「だ、大丈夫です。気にしないでください」と真っ赤になりながら、手をブンブン振って答えて。
「ならよかった。ま、上がれよ」
先輩の言葉に、少し遠慮しながらスリッパに足を通して、そのまま先輩の後ろをちょこちょことついていく。
「どうぞ」
そう言って開かれたドアの先はリビングだった。