Sweet Honey Birthday[完]
「あの、先輩。犬を飼うのに必要なものを教えて下さい。 うち、何も飼ったことないんです」
何も飼ったことない、っていうのが珍しいのか。先輩の目が大きく見開いて、
「そうなのか?親は飼っていいって?」
驚いた声でそう問われた。
「それは大丈夫です。驚いてはいましたけど」
それを聞いた先輩は「そっか」と呟き、少し微笑んでそっと息を吐くと、犬を飼うのに必要なものを教えてくれた。
「そんなに急いで揃えなくてもいいからな。昨日の今日だし、渡すにはしばらくあるから。
大丈夫だとは思うけど、何かあったときにショックがデカくなる…」
少し眉を潜めて、遠くを見ている先輩をそっと眺める。
先輩はきっと、同じような思いをした事があるんだと思う。
だから、私にはそんな思いをして欲しくないんだろうな。
優しい気遣いに、聞こえない位小さな声で、「ありがとう」と呟いた。