短編集
傷ついた少年×守ろうとする少女
いつもは凛々しい後ろ姿が今は、微かに震えている
「っ、…」
必死に何かを堪えながら、彼は苦しそうに泣いていた
「ねぇ」
呼んでも答えやしない、けどしつこくミキは呼び続ける
「ねぇ、ユキ」
泣かないでよ
言葉にならない声を胸のなかで呟いて、ミキは彼を後ろから抱き締めた
「っ、」
少しだけ反応をみせた彼は無言だ
「ユキ、苦しいの?」
それは疑問のはずなのに、肯定の意として発せられた
「そうだよね、ユキ、彼女の事が大好きだったもんね」
ミキは嘲笑にも似た笑みを浮かべた
長年の恋が散ることなく、失恋で終わったあの日
意中だった彼は幸せそうに笑って、言った
「俺ね、彼女できたわ」
気恥ずかしそうな彼に、私は胸を締め付けられて苦しくなった
あれから、2年
順調に愛を育んでいると思っていた
だけれども、学生と社会人にはあまりにも大きな壁があった
たくさんのすれ違いによって、彼女の方に好きな人ができたというあまりにも残酷な結末で二人は終わった