sai
昨日、ネオが帰る前…
「私の事…こわい…ですか…?」
「どうして、そんな事…?」
「…だって…いきなり…ここに来たか」
「こわくなんか、ありませんよ…」
僕は、ネオの言葉を急いで止めた。
「大丈夫ですよ、こわくなんか、ありませんから…」
「…本当に…ですか…?」
「はい。」
ゆっくりと、心を込めて言った。笑顔、うまく出来ているだろうか。
「……っ」
ネオが、泣き出した。目の前で。本当に、目の前で。母さんを除けば女性に泣かれた事なんて初めてで、僕は、どうしたらいいのかわからなかった。でも、
「ネオ…?」
自然と手が伸びた。僕の両手がネオの小さな顔を包み込み、両手の親指で、ネオの美しい瞳から溢れ出す涙を拭いた。
「ネオ…泣かないで…。」
涙で潤んだ瞳は、美しさが増していた。
「在さ…ん…」
「『在』で、いいですよ…。在と、呼んでください…。」
「…はい…。」
ネオが、笑顔になった。
僕は、ただ純粋にそれが嬉しくて…嬉しくて…
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