sai
5.あなたのために… そして、過去
 「どうぞ、座ってください。飲み物、コーヒーか紅茶かハーブティーがありますが…」
平静を装いながら、僕は緊張でおかしくなりそうだった。

 この緊張は、何だろう。

 「じゃあ…紅茶、お願いします…」
ネオは、その細長い足を折りたたみながら、ゆっくりと床に腰と荷物を下ろした。
 ネオは、部屋を見回している。僕は、そんなネオの姿を時々見ながら、紅茶の準備をする。

何故か、見たくなる、ネオ。

 その時だった…
「クッキー、食べませんか?私、焼いて来たんです。」
「…え?」
思わず、心の声が出た。

クッキーを焼いて来るなんて、ネオには不可能なはずだ。しかし、その事実は目の前にある。

一体、ネオは何なんだ…


…しかしそんな存在だからこそ、…だからこそ、その存在自体が不可能なはずなものであるからこそ、そのものに対して、僕らが不可能だと考える事は、発生するし、可能になるのだろう。クッキーや靴や、他にも、色々と。



だから、僕はネオに触れる事が出来たのだろう。
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