sai
「…在…私…っ!」
ネオが、不安そうな顔をして僕を見た。いくら何でも、ネオは、自分が普通ではないと思われている事を、理解している。

触れてはいけない、暗黙の了解。

言葉を交わさなくても、それは、僕とネオの間で通じている。

僕が、ネオをこわくないと言った、あの瞬間から。

だからあの時、ネオはこわくないけれど、ネオがいきなり来たという現象に対しては、こわさに似た感情が芽生えた…と、本音をネオに伝えていたら、きっと、ネオの真実を知る事が出来ただろう。

でも、聞いてはいけない気がした。

でも、正直な気持ちを言うと、ネオの真実を知る事が、それ自体が…

こわかったんだ…

ネオの普通じゃない存在を理解していながらも、それを否定しネオは普通だと思いたい気持ちが勝っていた。





僕の心は、矛盾だらけだった。





「…あ、はい…クッキー、頂きますね…。」
精一杯の僕の笑顔は、その分僕に疲れを与えた。
「…在…」
ネオが僕の名前を小さく呟いたのが聞こえた。

聞こえた…

でも、聞こえていない事にした
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