sai
 「いやだよ…なんでまたけんさするの、きのうやったばっかりなのにぃ…」
「在、そんな事を言うな。父さんが一緒に行ってやるから。」
「でもっ」
僕は、個室のベッドから離れようとしなかった。
「生きるんだ」
その時の僕には、父さんのその言葉の意味や重みを、まだ理解しきれていなかった。
「在、生きるんだ」
「いきる…?」
「そうだ…在、お前は、自分の病気をどう思う?」
「ぼくのびょうき…?」
父さんは頷く。
「きらいだよ…だって、こわいしいたいしかなしいし…それに…」
「それに?」
「ぼく…さみしいよ…」
「父さんと母さんがいても、か?」
子供心ながら、父さんがさみしそうな顔をした事が心痛かった。
「ちがう、ちがうよおとうさん…ぼく…ぼく…っ」
泣いてしまった。
「ごめんなさい…」
「在、泣くな。わかってるから。父さんこそ、ごめん…な…」

父さんは僕を抱きしめた


「おとうさんって、あったかいね…」


「…在…っ」
父さんが泣く声がした。
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