sai
僕の小さな頃からの願いは、両親への恩返しだった。昔、院内学級で、サンタに欲しいものを書く手紙を作成した。
それが手に入る事は無かったし、無理な願いだという事は、最初から知っていたけれど…サンタなんていない事も。それでも、僕は願いたかったんだ…


だって
僕は

『ぼくはおかあさんとおとうさんがぼくのびょうきのせいでなかないようにぼくのびょうきがなおるおくすりがほしいです○でもぼくのびょうきはきっとなおらないのでヽやっぱりおかあさんとおとうさんがなかないおくすりをください○ たかみやさい』

生まれたのが

『ぼくは、ほかになにもいらないから、父さんをいきかえらせるくすりがほしいです 高宮在』

あんなに優しい母さんと父さんの家族で

『僕は、母さんが僕の病気のせいで泣かない為の、僕の病気が治る薬が欲しい。でも、僕の病気は治らないだろう。だから、やっぱり母さんが泣かない薬が欲しい。でも、母さんは、父さんが死んでから1度も泣いていない。強く、なったのかな…泣けなくなったのかな… 高宮在』

幸せだったから…

本当に、僕は幸せだった。父さんの葬式の日を除いては。



母さんの決断、それに至った時間、悩み、苦しみを無駄にしたくない。


在の生きたい様に生きなさい、と、言ってくれた。仕事は、僕の仕事を母さんが引き継ぐ形になった。それなら、安心だ。家で出来るし、母さんはいくつかパソコンの資格を持っているので、すぐに仕事に慣れるだろう。
ずっと専業主婦だった母さん。僕が知らない間に、パソコンの資格をいくつか取得していた。
…僕にはそれが、母さんが、僕が死んだ時独りで生きていく為の事にしかどうしても思えなくて…それからかな、もしかしたら自分の人生は残り少ないかもしれない、と、思い始めたのは…

怖くて、確かめる事は出来なかったけれど…





 家の白さは、僕をうまくこの家に溶け込ませてくれた。



ここなら、きっと。

きっと…

 …その時だった。僕の足元に、1枚の紙が落ちている事に気付いた。置かれている様にも見える。ゆっくりと座りそれを読むと、それはすぐに僕の溢れた心で濡れていった。
「母さん…っ…父さん…っ!」
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