sai
3.「あなたの名前は…?」
 今日も、目覚めるとカーテンの隙間から太陽の光がこぼれてるのが目に入る。カーテンを開くと、思わず目を閉じる程の太陽の光が、僕の家に溢れる。窓を開くと、緑の匂いが爽やかに流れ込んでくる。

 その時だった。

 窓とは反対側から、空気が僕の背中を軽く押した様な感覚があった。


 何かがある。


 思わず、息を飲む。何かがいきなりそこに来て、そのせいで空気が押されて僕の背中に当たったのではないか。そんな気がして…
「…誰か…いるのですか…?」
そう言いながら、僕はゆっくりと振り返る。


 その時だけ、時の流れが緩やかになった様な気がした。

 窓から、風が緑の匂いを運びながら僕の顔に当たり、僕の中にその空気が入っていく事を心地良く感じながら、思わず目を一瞬閉じる。伸ばした髪が顔と首筋に絡み、それを左手で直しながら左から後ろを向く様に、体が動く。





美しい、少女だった…





 色素が薄い。輝く美しい金色の、頭の中心で分けられている、全体が腰まで伸びた長い髪に、陶器の様に白く輝く美しい肌。細く長く伸びた足の膝にかかる、袖の無い白いワンピース。彼女の細い腕や足と小さな顔、金髪の、全てが光に溶け込む様だった。
 そんな彼女の雰囲気をさらに深く、見た者の心に印象付けるのは、その、淡い緑の切れ長の瞳だった。


 神秘的な少女だった。


 しかし、その外見ながら少女は、その顔は、日本人離れしているにも関わらず、日本人の印象を僕に与えた。
 何故だろう。

 僕は、しばらく少女から目が離せなかった。


 「…あなたは…」
それ以上言葉が出ない。
 少女は、窓からの風に吹かれて揺れるその長い金色の髪に包まれていた。
 「…誰…ですか…?どこから…来たのですか…?」
いきなり現れた謎の神秘的な少女。家の鍵はかかっているのに。絶対、普通じゃない。
 でも、何故か僕は、怖くなかった。そして気付けばゆっくりと少女に近付いて行き、少女は、顔と体に絡む長い金色の髪をゆっくりと、両手で左右に分けながら…

 そのまっすぐな瞳が…僕の眼を、見ている…


 僕と少女は、顔1つ分位身長差があった。
 少女は、ただまっすぐに僕を見上げていた。
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