sai
 僕と少女の距離は、体が触れる程に近付いていた。その為少女はさらに顔を上向きにして、僕を見ていた。
 淡い緑の切れ長の瞳はさらに僕を見つめ、僕はその瞳や、少女自身の神秘的な美しさに吸い込まれる様に、僕を見上げる少女の瞳を、顔を下に向け見つめていた。
「…私の、名前…」
少女が、日本人が話す日本語で言葉を発した。透き通った、今にも消えてしまいそうな、儚く美しい声。
 その時、僕は感じた。
 少女自身のその神秘的な雰囲気は、声と同様、透き通った、今にも消えてしまいそうな、儚く美しいものではないか、と…
「…ネ…オ…」
少女は不安な顔をした。それは、少し迷っている様にも見えた。
 いきなり現れたという事は、いきなりここに来たという事だ。戸惑うのも、無理は無い。
「『ネオ』と、言うんですね…」
不安な顔をするネオに、僕は、苦手な笑顔を必死に作ってそう言った。


 ネオと、言葉を交わした。



 「優しい…笑顔ですね…」


嬉しかった…

僕が必死に作った苦手な笑顔を、ネオは微笑んでそう言った。



「あなたの名前は…?」
「サイ…」




優しい風が僕らを包み込む。
無条件で、包み込む。





…結局、ネオがどこから来たかは知る事は出来なかった。

聞いてはいけない気がしたんだ…
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