O.L.~Maple Honey Syrup~
「口を開けて」



そう言われて、素直に口を開く。



その瞬間…大好きな香りが口いっぱいに広がった。



「此処のパティシエ俺の知り合いで」



特別にキャラメルを作って貰ったらしい。



携帯はサイレントにして気付かなかったと…。



「これで許してくれる?」
『怒ってないよ』



笑うと今度は如月から抱きしめられた。



「やっぱり笑顔が安心する」
『ごめん』
「謝る事は無いよ。でも…」
『でも?』
「涙は苦手…」



苦笑いを見せると、優しくキスをされる。



さっきまで心を苦しめたチョコレートの香りが、今度は安心させる。



如月とチョコレートの香りで私は安心する。



「本当はずっと笑顔をみている予定だったのに」
『これからずっと笑っているよ』



もう1度キスして温もりを確認する。



泣いた事を後悔した。



如月は私を置いていったり、口に出さずに怒ったりしない。



どうしてそんな簡単な事を思わなかったのだろう。
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