俺の事どう思ってる？！

　服飾科と芸術科は同じ校舎に入っている。１階から３階が芸術科で４階から６階が服飾科となっており服飾科と芸術科は自由に行き来し、科を越えて友達がいる人が多い。



　舞奈と紫江が通っているのは服飾科であり香が通っているのは芸術科である。



　この事から十分に理解できる。



「舞奈…笑顔に戻りなよ…」



　呆れながら舞奈がさっきついた溜息を今度は香がついた。２人の様子を見ながら、どちらの味方にもつかない紫江が苦笑いをしている。



『今日…バイト…あるのに…』



　また小さく溜息をつく。



「今日も…でしょ！」



　やや口調をきつくして言う。紫江はついに声に出して笑い出した。笑い事じゃないと香が紫江に軽くポンと肩を叩くと、ごめんと胸の前で手を合わせる。



「よう！今日違う車だな」
『何台持ってるんだか…』
「金持ちだねぇ～」
『治！…楽しんでるでしょ！』



　親指を立て満面の笑顔を向けた。



　ただ…隣にいる男子生徒は床を見ながら、靴の爪先で床を叩いていた。ちらりと治が見ると明らかに怒っている…というより、拗ねている。



　それを見て吹き出した。気づいた男子生徒は治に背中を向けた。



「ほれ…実習室に行くぞ」



　治はブレザーの襟を掴み後ろ向きのまま歩き始めた。転びそうになり慌てて掴まれていた手を離し向きを直した。



「夢人…大人げないぞ！」



　新しい玩具を見つけた子供の様に、目を輝かせてからかっている。



　夢人はからかわれている事は分かっているが、大人の対応が出来ない…。理由は簡単である。



『車を停めないでと言いましたよね！』



　目の前に居る長身美男に舞奈が睨み、眉間にシワを寄せたまま言う。…チッと夢人が舌打ちすると治は笑うのを我慢した。



　舞奈は長身美男の目の前に立つと、さっきより大きな溜息をついた。



「２週間ぶり♪」



　弾ませながら笑顔で言うが、舞奈は更に嫌悪感を見せる。毎度の事とばかりに長身美男は話しを続けた。



「デートしよ♪」



　夢人が外車の前まで黙って歩きだした。近くにいた治は止めることなく見送り、次に起こる事態にワクワクさせた。



「弥生さん、舞奈はバイトですから」



　氷の様な視線を向け舞奈のが肩に掛けていた手提げを軽く引っ張り弥生から少し離した。