俺の事どう思ってる？！

　殺気立っている夢人から、舞奈がらみだと直ぐに認識出来た。



　夢人は舞奈の幸せを考え、気持ちを封印し２年近く友達を演じ続けている。



「あの人が浮気するか？」



　表情１つで図星だと分かる自分に凄いと治は思った。



　治が口に出した事で夢人の怒りは一層燃え上がるが、治は逆の考えが浮かんでいた。



「あの人が浮気するのか？」



　思わず出た言葉に２人ともハッとし、夢人の拳が緩んだ。



　誰から見ても弥生は舞奈一筋に見える。



　毎日学校まで迎えに来てバイト先まで送り、深夜のバイトが終わると家まで送る。



　それ程の愛情を注いでいるのに、浮気をするのだろうか…。夢人も冷静に考えた。



「確かに舞奈ちゃんが言ったのか？」



　首を横に振ると直ぐに背中に痛みが走った。治の平手が飛んで来たのだ。



「確かめてから来い！」



　夢人は頷き、治は大きな溜息をつき空き教室を出た。歩きながら夢人は「ごめん」と謝った。



　物事を冷静に判断し結論を出せる夢人の長所が、舞奈の事では脆くも崩れる。



　感情のままに動くのを見ると可笑しくなる。



　治は思わずニコニコしてしまい、それに気付いた夢人は怪訝な顔で見ていた。表情を元に戻し話しを始めた。



「まぁ、２人のどちらかに聞いてみれば？」
「そうする…」



　己に呆れて、力無く返事をし深くうなだれる。



　コロコロと変わる表情に治は笑いそうになるが、隣ですっかり力を無くした親友を見ると耐えるしかなかった。



「治と夢人だぁー、どうしたの２人で…」



　すっかり小さくなった夢人を見て「舞奈？」と口パクで聞くと治は頷く。香は夢人に近づき、先程治が平手を入れた所を叩き笑みをみせた。



「本人に聞いてみな♪」



　笑顔と弾んだ声の意味が理解しきれないまま教室に戻ると騒がしくなっており、その中心に舞奈と紫江の姿があった。



　予鈴が鳴り教室へ戻ってきた生徒もこの状況に足を止めた。



「盗作したのは飛天さんでしょ！」