泡の人
支度を整えて玄関に戻れば、強引に腕を引っ張られた。

せめて鍵くらいは締めさせて欲しいと懇願すれば、すんなりと解放してくれて。

だけどそれも一瞬。僕が鍵を締めたのを確認すると、また腕を引っ張られた。

「想い出巡り」

そう坂森さんは言うだけ。部屋の中ではあまり感じられなかった蝉の五月蝿さも、

外に出れば余計に五月蝿いと感じる。

その中で、僕は訳の分からない坂森さんに付き合わされる事となってしまった。

僕が何を言っても、彼は何も答えてくれない。

坂森さんとはあまり関わりたくない。早く逃げたい。

その気持ちで一杯。なのに彼はそれを許してくれなさそうだ。

まだ僕の行動に根を持っているというのだろうか？だとすれば執念深い人だと思う。

僕に償いをしろという意味ならば、かなりの迷惑。文句の1つでも言いたくなる。
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