泡の人
「き、君!バカな事はやめるんだ!まだ人生長いんだから…」

ボートの係員の人だろうか?必死に坂森さんを引き止めている。

そして当の本人はじたばたと暴れている。僕も慌てて止めに行った。

理由を聞いたら仲間と話がしたいと言っていた。きっと泡の事だろう。

ボートを使って湖面を手でかき回せば、仲間はやって来ると説得した。

少し間はあった物の彼は納得した様子。湖へ入ろうとするのをやめた。

係員の人に僕も一緒になって謝り、ボートの料金を払ってボートに乗った。

ボートから手を出し湖面をかき回す坂森さん。その表情はとても真剣。

変な人なのに真剣な目をしているから、本当に前世が泡だと思ってしまう。

その間、僕はただ1人取り残されたような感覚に陥っていた。

「もう良い、戻れ」

坂森さんがこの言葉を発したのは10分位しての事。

早いと思ったから本当に良いのかを確認した後、

彼は“良い”と即答だったので、僕は岸へとボートを漕いだ。
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