泡の人
翌日の夕方、昨日の出来事はもう気にしないようにしようと思っていた頃。

母さんから隣に一人暮らし男の子が越してきたと聞かされた。

このマンションで、一人暮らしをする人は珍しくはない。

だから適当に聞き流すだけ。

母さんは、父さんと言う者がありながらそれを嬉しそうに話す。

まるで憧れのアイドルを見てきたかのよう。

どうやら母さん好みの美形な人だと言う事だけは分かった。

「ミチルも挨拶に行って来なさい」

面倒だから断ったのに、結局無理矢理行かされる羽目に。

507号室の番号の下には“森坂”の2文字。

この部屋の住人は“モリサカ”さんと言うらしい。

ベルを鳴らす。少しして現れたのは漆黒の髪に、青い瞳の男。

ハーフかクオーターなのだろうか?

その瞳はどんな外国人の青い瞳よりも綺麗で、吸い込まれそうになる。

「何か用?」

見惚れてしまっているあまりに、ぼんやりとしていたようだ。
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