泡の人
次に向かったのは緩やかな流れの小川。

そこでも小さな親子連れが楽しそうに遊んでいる。何だか微笑ましい。

さっきと同じように坂森さんはまた手を水につける。“仲間”からの情報を得る為に。

僕はただそれを眺めているだけ。何も出来ないのが少し虚しい。

そんな時に改めて思う。僕って別に必要ないんじゃ?ただこの繰り返しなら彼1人でも出来る。

本当に何の為に僕を連れ出したのだろう?やっぱり償い?

「どうかしたか?」

いきなり話し掛けられて僕は驚く。思い切ってさっきの疑問をぶつけてみれば、少し意外な答え。

「お前が俺をあまりにも避ける。仲良くしたいってのにさ。だからだ。悪い?」

無言で首を振る僕。そうか、僕はずっと彼を避けていた。そっち系の人間だと思って。

彼がふっと微笑んだ。それは母さんに向けてのあの微笑みとはまた違う。

何て言葉で例えれば良いか分からないけれど、本当の微笑み。

母さんに向けられている微笑みが偽物と言う訳ではないけれど、それが1番適切な言葉。
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