泡の人
ねえ、リュウ。今君は此処に存在している?

…って、僕の泡だって言う確証はないか。バカだな。

「バーカ」

不意に聞こえた聞き覚えのある声。誰かが僕を覗きこんでいる。

慌てて立ち上がると、やっぱり薄暗くてよく分からないけれど、それは紛れもなく…

何だよ泡に戻ったんじゃないの?どうして君が此処にいるの?もう未練なんてない筈だろ?

「お前に会いに来た。伝える事がある。俺はお前とずっと一緒にいる。友達として。

ついでに言うと俺はお前の泡だったりする。まあ、それはさておいてだな。

1年かけて魔法をかけてもらった。1ヶ月に1度、5日間限定で人間になれるようにと」

それはつまりえーと…?

「よろしく頼む、隣人さん」

大切な友達が帰って来た喜び。何だか涙が出てきそう。

相変わらず“そっち系”を疑ってしまう発言ばかり。懐かしい。

「未練は1つ。お前と友達でいれなかった。それだけ。

でなかったら魔法なんてかけてもらわないって」

水音が響く。その中で、僕はたった一言呟いた。
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