泡の人
「また来てちょうだいね」

「ええ、喜んで」

来なくて良い。森坂さんが僕の事を気にしなくなるまで。

しかし思えば夕食の間、何も僕は聞かれなかった。

と言うことはもう大丈夫なのだろうか?そう思った瞬間だった。

「お前、昨日の奴だろ?」

僕に近付いてきてそう囁く。きっと顔は真っ青になったに違いない。

「少し彼を借りても良いですか?全然話せなかったので」

「あらあらどうぞ」

「おー、連れてけ連れてけ」

その言葉を背に、僕は彼に強引に腕を引っ張られて家を強引に出る羽目に。

行き先はすぐ隣。数秒で辿り着いた。

扉の閉まる音が聞こえ、“上がれ”と言うのでそのまま部屋に上がった。

引越ししたてだからか、少しダンボールが多い気がするその部屋。

それでも綺麗で。近くにあったソファーに腰掛けた。

何の用かと聞いてみた。すると彼はこう言った。
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