泡の人
失礼だとは思いながらも、僕は聞いた。友達の有無を。

彼は答えた。“沢山いる”と。でもそれは前世と言い張る“泡”で。

何だか話せば話すほどにあまり関わりたくなくなってくる。

此処から早く出たいと願っても、出て行くタイミングが見付からない。

すると坂森さんは何を思ったのか、僕の手を握った。

男の僕の手を男の坂森さんが握る。氷とまではいかないけれど、冷えた手。

2つの意味で少し鳥肌が立ちそうになった。その時、坂森さんは言った。

「泡はすぐ消える命じゃない。その人間の為にずっと存在を…」

その目は少し悲しげで。嘘偽りのない真剣なもの。だけど、だけど…

僕はやっぱり前世が泡と言う事なんて、言われても信じる事は出来ない。

帰るタイミングは此処だと思い、そのまま家へと帰って行った。
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